手足のしびれがあるのに画像では異常なし…実は「脚気」かもしれません

「手足がしびれて病院へ行ったのに、レントゲンやMRIでは『異常なし』と言われた」——そんな経験はありませんか?
画像検査で異常が見つからない場合、その原因のひとつにビタミンB1不足による「脚気(かっけ)」があります。
脚気は戦争中に多かった「昔の病気」というイメージがありますが、現代でも偏食やアルコール多飲などの生活習慣から発症するケースがあります。この記事では、整形外科医の視点から「脚気」による手足のしびれの特徴、診断、予防・治療法について解説します。
脚気とは?歴史と現代の違い
脚気はビタミンB1(チアミン)の不足によって起こる病気で、末梢神経障害や心不全を引き起こすことがあります。
戦争中の脚気
明治〜昭和初期、日本では白米中心の食生活によりビタミンB1不足が深刻化しました。特に軍隊での発症が多く、兵士の死亡原因にもなりました。当時は「国民病」と呼ばれたほどです。

現代の脚気
発症は珍しくなりましたが、ゼロではありません。インスタント食品や外食中心、糖質偏重の食生活が続くと発症することがあります。アルコール多飲や高齢者の低栄養もリスク要因です。

脚気による手足のしびれの特徴
脚気は末梢神経が障害されることで、足から手へ広がるしびれや感覚鈍麻が出ます。
主な症状は以下の通りです。
- 足のしびれ、感覚低下
- 足のむくみ(湿性脚気)
- 歩きにくい、ふらつく
- 動悸、息切れ(心臓への影響)
- 倦怠感、疲れやすさ
レントゲンやMRIでは骨や構造の異常は分かりますが、ビタミン不足による神経の機能低下は映りません。そのため、画像検査だけでは見逃されることがあります。
当院では脚気を疑った場合、まずは問診と身体診察で、食生活や飲酒習慣、体重の変化を確認したり、下肢の腱反射、感覚検査、歩行評価なども行っています。
脚気の治療と予防
食事改善
ビタミンB1を多く含む食品(豚肉、うなぎ、玄米、大豆、ナッツ類)を積極的に摂取しましょう。糖質の摂りすぎにも注意が必要です。
ビタミンB1補充
不足が強い場合はサプリメントや注射で補充します。当院でも対応可能です。アルコール依存症の方は生活指導と併用します。当院ではニンニク注射(ビタミンB1注射)も導入予定です。
生活習慣の見直し
偏食を避け、バランスの良い食事を心がけましょう。適度な運動と十分な睡眠も重要です。
まとめ
脚気は戦争中に多かった病気ですが、現代でも発症する可能性があります。
手足のしびれが長引く場合は、画像検査で「異常なし」と言われても安心せず、血液検査でビタミン不足を調べてもらいましょう。

執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会