「疲れやすい」
「朝からだるい」
「立ちくらみがある」
「集中できない」
「検査で異常なしと言われたけれどつらい」
このような不調の背景に、鉄不足が隠れていることがあります。
鉄は、赤血球を作るためだけの栄養素ではありません。
酸素を運び、筋肉を動かし、細胞を働かせ、神経や成長にも関わる、体にとって大切なミネラルです。
なんとなく続く不調の原因が、実は鉄不足だったということは少なくありません。
鉄不足で起こりやすい症状
鉄が不足すると、次のような症状が出やすくなります。
- 疲れやすい
- だるい
- めまい
- ふらつき
- 動悸
- 息切れ
- 集中力の低下
乳幼児や子どもでは、発達や学習への影響につながることもあります。
「寝ても疲れが取れない」
「立ち上がるとふらっとする」
「やる気が出ない」
こうした症状があるときは、鉄不足も一つの可能性として考える必要があります。
鉄は体の中で何をしているのか
鉄は、赤血球の中にあるヘモグロビンの材料になります。
ヘモグロビンは、肺で取り込んだ酸素を全身へ運ぶ役割をしています。
また、鉄は筋肉の中にあるミオグロビンにも必要です。
そのため、筋肉の働きや代謝にも関わります。
さらに鉄は、神経の発達、細胞の機能、ホルモン合成にも必要です。
つまり、鉄が不足すると、全身にさまざまな不調が起こりやすくなります。
鉄代謝をわかりやすく説明します
鉄は食事から取り入れられます。
体に入った鉄は、血液中でトランスフェリンに結合して運ばれ、必要な場所で使われます。
使い切れなかった鉄は、フェリチンとして肝臓・脾臓・骨髄などに蓄えられます。
成人の体内には約3〜4gの鉄があり、その多くはヘモグロビンとして存在しています。
栄養医学的には成人では、細胞のもつ機能を最大化するには約1gの貯蔵鉄が必要といわれています。
フェリチン1mg/mlは貯蔵鉄8mgを反映しますので、フェリチンは理論上125ng/ml(計算式1000/8=125)が必要なのです。
鉄不足は、いきなり貧血になるわけではありません
鉄不足というと「貧血」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、鉄不足は最初から貧血になるわけではありません。
まずは貯蔵鉄が減る段階があります。
次に、鉄をうまく使えない状態になります。
その後に、鉄欠乏性貧血へ進んでいきます。
そのため、ヘモグロビンが正常でも鉄不足のことがあります。
「血液検査で貧血ではないと言われたから大丈夫」とは言い切れません。
ヘム鉄と非ヘム鉄の違い
鉄には大きく分けて2種類あります。
ヘム鉄
肉や魚などの動物性食品に多い鉄
非ヘム鉄
野菜、豆類、海藻などに多い鉄 ビタミンCが吸収には必要です。
一般に、ヘム鉄のほうが非ヘム鉄より吸収されやすいことが知られています。
鉄をしっかり補いたいときは、「鉄が入っているか」だけでなく、吸収されやすい形かどうかも大切です。
鉄をとるなら、肉や魚も大切です
鉄を意識するなら、野菜だけでは不十分なことがあります。
肉や魚などの動物性たんぱく質をしっかり組み合わせることが大切です。
特に、赤身の肉、魚、鶏肉などは、吸収されやすいヘム鉄を含みます。
さらに、ビタミンCを一緒にとると非ヘム鉄の吸収を助けやすくなります。
「鉄をとりたいからほうれん草を食べる」だけでは足りないこともあります。
食事全体のバランスが重要です。
鉄不足が起こりやすいのはどんな人か
鉄不足は、次のような方で起こりやすくなります。
- 乳幼児
- 成長期の子ども
- 思春期の方
- 月経のある女性
- スポーツをしている方
- 食事量が少ない方
- 偏食がある方
特に、月経のある女性は鉄を失いやすいため、鉄不足になりやすい代表的なグループです。
また、成長期の子どもやスポーツをしている方も、鉄の必要量が増えやすいため注意が必要です。
ヘモグロビンだけでなく、フェリチンも大切です
鉄不足を考えるときに大切なのは、ヘモグロビンだけを見ないことです。
採血でヘモグロビンが正常でも、フェリチンが低ければ貯蔵鉄が減っていることがあります。
つまり、まだ貧血とまではいかなくても、体の中では鉄不足が進んでいる場合があります。
ただし、フェリチンは炎症や感染、肝機能障害などで高く出ることがあります。
そのため、実際にはフェリチンだけで決めるのではなく、症状やほかの採血結果も合わせて判断することが大切です。
鉄サプリは自己判断で続けすぎないことが大切です
鉄サプリは、手軽に補充できる方法として使われることがあります。
しかし、自己判断で長く続ければよいというものではありません。
鉄は不足しても問題ですが、過剰でも体に負担をかけることがあります。
そのため、
「疲れるからとりあえず鉄を飲む」
「吸収がよいサプリなら安全」
と考えるのは危険です。
鉄の補充は、フェリチンなどを確認しながら必要な量を判断することが大切です。
当院で大切にしていること
当院では、肩こり、腰痛、全身の痛み、疲れやすさ、だるさ、回復の遅さ、立ちくらみなどについて、整形外科的な視点だけでなく、栄養面からも確認しています。
必要に応じて採血を行い、
ヘモグロビンだけでなくフェリチンも含めて鉄の状態を評価します。
そのうえで、食事の見直しや必要な補充について、わかりやすくご説明します。
こんな方はご相談ください
- 疲れやすい
- 立ちくらみやめまいがある
- 月経量が多い
- スポーツ時のパフォーマンスが落ちた
- 検査で異常なしと言われたがつらい
- 鉄サプリを飲んでいるのにすっきりしない
まとめ
鉄不足は、単なる「貧血」だけの問題ではありません。
体の土台に関わる大切な問題です。
「なんとなく不調が続く」
「検査では異常なしと言われた」
そのようなときこそ、鉄の状態を一度確認することが大切です。
気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
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執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会

