- 50歳以上の女性に多い、膝の内側(大腿骨内顆)に起こる突然の強い痛み。
- 初期はレントゲンに写らず、MRIで診断できます。
- 早期発見なら装具・免荷など保存療法で手術回避が期待できます。
まずはここをチェック
- ある日突然、膝の内側がズキズキ痛む
- 歩行や階段・正座で痛み増強
- 「変形性膝関節症」と言われたが、痛みの出方が急
- 打撲の覚えがないのに痛くなった
当てはまる場合、大腿骨内顆骨壊死の可能性があります。早めにMRIで確認しましょう。
原因(考えられていること)
- 骨への血流不足 → 骨細胞の壊死
- 更年期以降の女性に多い(ホルモン影響)
- ステロイド内服・多量飲酒・膝への過負荷が関与することも
- 明確な単一原因は不明だが、放置で変形性膝関節症に進行し得ます。
病期(ステージ)と治療
初期(ステージ1–2)
所見
- レントゲン:異常なし〜軽度
- MRI:骨髄浮腫(骨のむくみ)/壊死域
- 関節面はまだ保たれる
治療
- 保存療法が中心(免荷・装具・杖で負担軽減)
- 鎮痛薬、炎症コントロール
- リハビリ(大腿四頭筋・臀筋の強化、関節可動域の維持)
適切な対応で自然治癒するケース多数。

進行期(ステージ3)
所見
- レントゲン:圧壊像、関節面軽度陥没(2mm未満)
- 歩行痛が顕著
治療
- 症例により手術を検討
- 高位脛骨骨切り術(HTO):荷重軸を外側へ移し、内側の負担を軽減
適切な時期の介入で人工関節回避の可能性が高まります。
末期(ステージ4)
所見
- レントゲン:明らかな骨崩壊/関節変形
- 変形性膝関節症へ進行
治療
- 人工膝関節置換術(TKA)を検討
- 術後リハで歩行機能の回復を目指します
画像でどこまで分かる?
〇:診断可 △:場合により可 ×:不可
| ステージ | レントゲン | MRI |
|---|---|---|
| 1 | × | 〇 |
| 2 | △ | 〇 |
| 3 | 〇 | 〇 |
| 4 | 〇 | 〇 |
初期はレントゲンだけだと見逃しやすいため、MRIが鍵になります。

- 診察・問診(突然痛・内側痛・夜間痛の有無)
- レントゲン(変形・圧壊の有無)
- MRI(初期診断に必須)
- 治療方針(保存:免荷・装具・薬・リハ/手術の要否)
- フォロー(画像と症状を並行チェック)
症例(50代・女性)
- 初診レントゲン:異常所見なし
- MRI:大腿骨内顆の初期骨壊死を示唆
- 装具+免荷を直ちに開始し、疼痛消失
- 約3か月で治癒、後遺症なし
※本症例は「外顆型」を疑う所見にも合致し得ますが、診断・治療原則は共通です。実際の局在はMRIで厳密に判定します。

初診時のMRI

装具療法から3か月後のMRIで治癒を確認
大切なポイント
- 突然の内側痛+打撲なし → 早期にMRI
- 初期なら保存療法で改善が期待
- 放置は進行リスク(関節変形・人工関節の可能性)
よくある質問(FAQ)
Q. いつまで歩きを制限すべき?
A. 痛みの強さと画像所見で調整します。痛みゼロ→部分荷重→全荷重と段階を踏みます。
Q. リハビリは何をしますか?
A. 荷重軸の最適化、股・膝周囲筋の強化、可動域維持。痛みを悪化させない範囲で進めます。
Q. 手術は必ず必要?
A. 多くは不要。ただし進行例(ステージ3〜4)では骨切り術や人工関節を検討します。
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執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会

