股関節がいたい

股関節について

股関節は、「立つ」「歩く」「座る」など、日常の基本動作に関わる重要な関節です。歩行時には交互に片足に体重がかかるため、股関節には想像以上の負担がかかっています。特に、片足に体重が乗る瞬間には、体重の数倍の負荷がかかるともいわれており、異常が生じると痛みや関節の変形を引き起こしやすくなります。

さらに、股関節の動きは腰や膝とも密接に関係しているため、問題が進行すると歩行や姿勢に影響を及ぼし、日常生活に支障をきたすことがあります。症状が悪化すると、立つ・歩くことが困難になり、最終的には寝たきりのリスクが高まることもあります。

股関節の異常を放置せず、早期に適切な治療を受けることが、健康な生活を維持するために重要です。当院では、専門的な診断と総合的な治療を提供し、患者様の生活の質を向上させるサポートを行っています。

股関節の構造と働き

股関節は、太ももの骨(大腿骨)と骨盤がつながる部分で、体の動きを支える重要な役割を担っています。

大腿骨の先端は丸いボール状の形(骨頭)をしており、骨盤側の受け皿となる臼蓋(きゅうがい)にしっかりとはまることで、スムーズな動きを可能にしています。この構造により、股関節は前後・左右・斜めといったさまざまな方向に動かすことができます。

しかし、生まれつき臼蓋が浅いと骨頭がずれやすくなり、関節に負担がかかることで変形を引き起こすことがあります。また、生まれつき股関節が外れている場合は、小児期の検診で異常が見つかることがあります。早期に適切な治療や育児の工夫を行うことで、成長とともに状態が改善することが期待できます。ただし、変形が進行し重度になると、手術による治療が必要となることもあります。

股関節の健康を維持するためには、違和感を感じた時点で早めの診察を受け、適切な対策を取ることが大切です。

股関節に異常を生じる主な原因

骨折

転倒などの強い衝撃で股関節を骨折することがあります。特に大腿骨頸部の骨折が多く、骨粗鬆症の高齢者や更年期以降の女性に多発します。骨折すると立つ・歩くことが困難になります。痛みを取り除き再び歩けるようにするには手術が必要となります。

大腿骨頸部骨折・転子部骨折は、骨粗鬆症により骨がもろくなることで発生しやすくなります。特に高齢者の転倒が主な原因です。

関節部分の変形(変形性股関節症)

生まれつきの骨の形状異常や加齢による軟骨のすり減りが原因となります。臼蓋と大腿骨の骨頭が過度にこすれ合い、痛みや変形が進行します。

大腿骨頭壊死

大腿骨のボールの部分が突然壊死してしまう病気です。原因不明のものと原因が明らかなものに分かれます。

主な症状

  • 股関節部分の強い痛み
  • 歩行が困難
  • 立つ・座るのが難しい
  • 階段の上り下りで足のつけ根が詰まる感じがする
  • 足の爪切りや靴下を履く動作が難しい
  • 車やバスの乗り降りに手すりが必要になった

股関節は日常生活のあらゆる動作に関わる重要な関節です。上記のような症状がある方は、早期診察をおすすめします。

股関節の異常は放置すると進行する可能性があります。違和感を感じたら、お早めにご相談ください。

股関節の痛みの主な原因と疾患

変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)

変形性股関節症とは?

変形性股関節症は、関節の軟骨がすり減ることで股関節に炎症が起こり、痛みや可動域の制限を引き起こす病気です。特に中高年の女性に多く、先天的な臼蓋形成不全が関与することが多いです。

症状

  • 歩き始めや長時間歩いた後に股関節が痛む
  • 足の付け根やお尻の痛みが続く
  • 関節がこわばり、動かしにくくなる
  • 進行すると、安静にしていても痛みが取れない

治療法

  • 保存療法: 
    体重管理、ストレッチ・筋力トレーニング、鎮痛薬、ジョイクル注射
  • リハビリ:
    股関節周囲の筋肉を鍛え、関節への負担を減らす
  • 手術:
    人工股関節置換術

大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)

大腿骨頭壊死症とは?

大腿骨頭壊死症は、大腿骨の骨頭部分の血流が障害されることで、骨組織が壊死(えし)してしまう病気です。日本では「特定疾患(指定難病)」に認定されており、早期発見・治療が重要です。

分類

大腿骨頭壊死症は、原因が特定できない特発性大腿骨頭壊死と、明確な原因がある続発性大腿骨頭壊死に分類されます。

  1. 特発性大腿骨頭壊死: 明らかな原因がなく発症するタイプ。
  2. 続発性大腿骨頭壊死: 明確なリスク因子があるタイプ。

続発性の原因

  • ステロイド薬の長期使用: 
  • 大量の飲酒: 
  • 自己免疫疾患や血液疾患: 
  •  股関節の脱臼や骨折などの外傷

病期分類(ステージ)

  1. ステージ1(初期): X線では異常が見られないが、MRIで病変が確認できる
  2. ステージ2(進行期): 骨の変形が始まり、痛みが出る。
  3. ステージ3(壊死部崩壊期): 骨頭の潰れが進み、関節面が不安定になる。
  4. ステージ4(末期): 変形性股関節症に移行し、関節の破壊が進む。

症状

  • 歩くときに股関節が痛む
  • 股関節の動きが悪くなる
  • 進行すると、夜間や安静時にも痛みが続く
  • 足の長さが左右で異なることがある

治療法

  • 保存療法: 安静、杖の使用、鎮痛薬
  • 理学療法: 関節の可動域を維持するためのストレッチや運動
  • 手術: 人工股関節置換術

閉鎖神経障害(へいさしんけいしょうがい)

閉鎖神経障害とは?

閉鎖神経は骨盤から太ももの内側を通る神経で、これが圧迫されることで痛みやしびれが生じる病気です。股関節の手術後や筋肉の過緊張が原因となることがあります。

症状

  • 太ももの内側のしびれや痛み
  • 歩行時の違和感
  • 股関節の可動域の制限

治療法

  • 神経リリース注射: 神経の圧迫を和らげる注射療法
  • 理学療法: 股関節周囲の筋肉の柔軟性を高めるストレッチやマッサージ

大腿神経痛(だいたいしんけいつう)

大腿神経痛とは?

大腿神経が圧迫されることで、太ももの前面に痛みやしびれが生じる病気です。長時間の座位や姿勢の悪化が影響することが多いです。

症状

  • 太ももの前面のしびれや痛み
  • 立ち上がり時の違和感
  • 筋力低下を伴うこともある

治療法

  • 神経リリース注射: 神経の炎症や圧迫を和らげる
  • 理学療法: 股関節の可動域を広げる運動やストレッチ
  • 薬物療法: 鎮痛薬やビタミンB12製剤の使用

当院では、股関節の痛みや疾患に関する診察・治療を行っています。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。

中村 公一

執筆者中村 公一

院長 / 整形外科専門医

親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。

経歴
津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
保有資格
医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
所属学会
日本整形外科学会 / 日本関節病学会