お尻の外側が痛い…それ、上殿神経障害かもしれません
「お尻の外側がズキズキ痛む」
「歩くとつらい/片脚で立つと不安定」
「坐骨神経痛と言われたけど、なんか違う気がする」
こうした症状の原因のひとつに、上殿神経の障害があります。上殿神経は、お尻の奥で中殿筋・小殿筋(股関節の外転筋)を動かす大切な神経で、障害されると“お尻の外側の痛み”+“股関節の外転筋の弱り”がセットで出やすいのが特徴です。
※注意:「上殿神経」と似た名前で、上殿皮神経(上殿皮神経障害)という“皮膚の感覚の神経”の痛みもあります。こちらは骨盤の上の縁(腸骨稜)あたりの圧痛が特徴で、病態が別です。
(この記事は“筋肉を動かす神経”である上殿神経を主テーマに解説します)
上殿神経ってどこ?何をしている神経?
上殿神経は骨盤の奥で走り、主に
- 中殿筋
- 小殿筋
- (+大腿筋膜張筋)
を支配します。
これらは、歩くときに骨盤が傾かないように支える“体幹の土台”の筋肉です。ここがうまく働かないと、片脚で立った時に骨盤が落ちる(トレンデレンブルグ徴候)や、歩き方の崩れが出ます。
こんな症状があれば疑います(セルフチェック)
次の項目が当てはまるほど、上殿神経障害を疑います。
痛みの特徴
- お尻の外側〜後外側が痛い(ピンポイントのことも)
- 腰痛よりも「臀部痛」が主役
- 長く歩く/立つと悪化することがある(休むと軽くなることも)
筋力のサイン(重要)
- 片脚立ちで骨盤が傾く/ふらつく(トレンデレンブルグ)
- 階段や坂でお尻の外側がつらい
- 脚を外に開く力が入りにくい(股関節外転の弱さ)
なぜ起きる?
上殿神経の障害は、ざっくり言うと
①どこかで圧迫・引っ張られる(絞扼)
②外傷・術後などでダメージを受ける
で起こります。
古典的には、骨盤の奥で筋・腱性の組織により神経が刺激され、臀部痛+股関節外転の弱りが出るタイプが報告されています。
お尻の外側が痛い…それ、上殿神経障害かもしれません(坐骨神経痛と違うタイプ)

上殿神経は中殿筋と小殿筋の間を通っており、筋間で神経が絞扼されることが多いです。
治療
治療は「神経に負担をかけている要因を減らす」+「中殿筋機能を回復させる」が柱です。
1)負担を減らす(まずここ)
- 痛みが強い時期は、無理な長距離歩行や坂・階段を一時的に調整
- 片脚荷重が多い姿勢(立ち仕事の癖など)を見直す
- 痛みが増える動作の“フォーム改善”
2)リハビリ(中殿筋を「働ける状態」に戻す)
上殿神経が関与する場合、中殿筋の再教育が重要です。
いきなり強い筋トレではなく、痛みと筋反応を見ながら段階的に行います。
※中殿筋腱障害など別疾患が混ざることもあるため、評価に応じて内容を調整します。
3)薬・注射など(必要に応じて)
炎症や痛みが強い場合は消炎鎮痛薬などを併用します。
また、診察で“どこが痛みの主座か”がはっきりしている場合、局所の治療(注射を含む)を検討することがあります。
当院ではエコーガイド下で中殿筋と小殿筋の間を確認しながら注射をすることで精度の高い治療を行っています。
まとめ
お尻の痛みは「坐骨神経痛」だけではありません。
上殿神経の障害では、臀部外側の痛みに加えて、中殿筋の弱り(片脚立ちの不安定さ)がヒントになります。一方で臀部以外の筋力低下はきたしにくい特徴があります。
痛みの原因が違えば、効く治療も変わります。
「場所と動きで痛み方がいつもと違う」「リハビリしても噛み合わない」などがあれば、一度きちんと評価して、最短ルートの治療につなげましょう。

執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会

