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鼠径部痛・太もも内側の痛みは閉鎖神経障害?原因・症状・検査と治療(ハイドロリリース)

鼠径部痛・太もも内側の痛みは閉鎖神経障害?原因・症状・検査と治療(ハイドロリリース)

鼠径部痛・太もも内側の痛み——「閉鎖神経(へいさしんけい)障害」の可能性は?

鼠径部(股の付け根)〜太もも内側にかけての痛みは、股関節の病気内ももの筋肉(内転筋)のトラブルが原因であることが多い一方で、見落とされやすい原因として 閉鎖神経の障害(神経の締めつけ) が関係することがあります。

閉鎖神経は骨盤の中から太ももの内側へ向かう神経で、

  • 太もも内側の感覚
  • 足を閉じる動き(内転)に関わる筋肉
    に関与しています。

【図1:閉鎖神経の走行(全体像)】閉鎖神経は腰神経(L2・L3・L4)から出て、骨盤内を通って太もも内側へ向かう神経です。太もも内側の感覚と、足を閉じる動き(内転)に関わります。


閉鎖神経障害で出やすい症状

次のような症状の組み合わせがあると、閉鎖神経が関係している可能性があります。

  • 鼠径部〜太もも内側の痛み(ズーンとした深い痛み、灼ける感じ、しびれっぽさ)
  • 足を閉じる動き(内転)で痛い/力が入りにくい
  • 太もも内側がピリピリする・感覚が鈍い(範囲は人により差があります)

特にスポーツをされる方では、運動で悪化する慢性的な鼠径部痛の原因として、閉鎖神経の締めつけが関係することがあります。


【図2:痛み・しびれの出やすい範囲(体表マップ)】
①関節枝:股の付け根〜股関節の奥の痛み
②前枝:太もも内側の痛み・しびれ感


原因(なぜ起きる?)

閉鎖神経の障害は、例えば次のような状況で起こることがあります。

  • 神経の通り道で締めつけられる(周囲の筋膜や組織の影響)
  • 手術・外傷・打撲後の血腫などによる影響
  • まれに、骨盤内の病気で神経が圧迫されることがあります

当院での診察:何を確認するの?

閉鎖神経が関係していそうかどうかは、症状だけでは判断が難しいため、診察で次の点を丁寧に確認します。

1)内ももの筋力(力の入り方)

閉鎖神経が関係する筋肉の力を確認します。
当院では特に、内ももの筋肉の中でも 神経と関連が深い筋肉を意識してチェックします。

2)股関節のテスト(FABER / FADIR)

股の付け根の痛みは、股関節の病気でも起こります。
そのため当院では、股関節を動かしたときに痛みが誘発されるかを確認します。

  • FABERテスト
  • FADIRテスト

これらが陽性の場合、まずは 股関節由来の痛みを疑って評価します。

【図3:FABERテストをした時の閉鎖神経】
閉鎖神経の絞扼性障害の場合、閉鎖神経の関節枝が引っ張られるため痛く感じる

MRIで「別の原因」を除外することも大切です

鼠径部痛は、閉鎖神経だけが原因とは限りません。
股関節の病気(関節唇損傷、FAI、変形性股関節症など)が隠れていることもあるため、必要に応じて MRIで別の病気を除外(または併存を評価) します。


当院の治療:エコーガイド下「ハイドロリリース注射」

閉鎖神経が周りの組織に引っかかっている(滑りが悪い)ような場合、当院では エコーで神経や周囲を確認しながら、神経の周りに液体を注入して滑走性を改善する

エコーガイド下ハイドロリリース注射

を行い、神経の締めつけ(絞扼) にアプローチします。
※すべての鼠径部痛が対象ではありません。症状・診察・検査で適応を判断します。


併用が重要:理学療法(リハビリ)でのアプローチ

神経の痛みは、周囲の筋肉の硬さや動きのクセが関係していることがあります。
当院では理学療法(リハビリ)で、

  • 手を使った徒手療法(周囲組織の緊張・滑走の改善)
  • 股関節や体幹の動きの改善
  • 再発しにくい身体の使い方(運動療法)

を組み合わせて行います。

よく似た原因(鑑別)

鼠径部痛・太もも内側の痛みは原因が多彩です。次のような病気も同時に考えます。

  • 内転筋の肉離れ/付着部炎
  • 股関節の病気(関節唇損傷、変形性股関節症など)
  • 腰からくる神経の痛み(腰椎由来)
  • スポーツヘルニア(鼠径部周囲の障害)
  • 内科・婦人科・泌尿器科・消化器の病気(安静時痛や発熱などがある場合)

よくある質問(Q&A)

Q1. 股関節の病気と閉鎖神経の痛みはどう違いますか?

股関節の病気は、股関節を曲げる・ひねる動きで痛みが出やすく、検査(FABER/FADIR)で誘発されることがあります。閉鎖神経の場合は、太もも内側の痛み・しびれや、足を閉じる動きでの痛み/力の入りにくさがヒントになります。必要に応じてMRIで評価します。

Q2. ハイドロリリース注射は誰でも受けられますか?

すべての鼠径部痛が対象ではありません。診察での所見や経過、必要な検査を踏まえて、神経の締めつけが疑われる場合に適応を検討します。

Q3. リハビリだけで良くなることもありますか?

原因が筋肉や動きのクセに強く関係している場合、リハビリで改善することがあります。神経の滑りの悪さが疑われる場合は、注射とリハビリを組み合わせることで改善を目指します。


まとめ

鼠径部〜太もも内側の痛みは、股関節や筋肉の問題だけでなく、閉鎖神経の締めつけが関係していることがあります。
当院では、診察で原因を見極め、必要に応じてMRIで別の病気を除外したうえで、エコーガイド下ハイドロリリース注射理学療法を組み合わせて改善を目指します。

中村 公一

執筆者中村 公一

院長 / 整形外科専門医

親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。

経歴
津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
保有資格
医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
所属学会
日本整形外科学会 / 日本関節病学会