子どもの首が急に曲がった?炎症性斜頸と「放ってはいけないサイン」
よくあるケース:朝起きたら首が曲がっている…
- 朝起きたら、子どもの首が片方にグッと傾いている
- 動かそうとすると痛がって大泣きしてしまう
- 昨日まで普通だったのに、急に首が曲がって戻らない
このようなとき、考えられる原因のひとつが
「炎症性斜頸(えんしょうせいしゃけい)」 です。
「寝違えかな?」と思って様子を見てしまいがちですが、
首の痛みには慎重な対応が必要 です。
炎症性斜頸ってどんな病気?
斜頸とは?
斜頸(しゃけい) とは、首が一方向に傾いたままになり、
反対側を向きにくくなる状態のことをいいます。
炎症性斜頸とは?
その中でも、次のような 「炎症」をきっかけに起こる斜頸 を
炎症性斜頸 と呼びます。
- 風邪
- 咽頭炎(のどの炎症)
- 中耳炎
- 扁桃炎 など
とくに 子どもに多い ことが特徴です。
なぜ炎症で首が曲がるの?
流れとしては、こんなイメージです。
- 風邪や咽頭炎・中耳炎などで、のどや耳の奥、リンパ節に炎症が起こる
- 痛みを避けるために、子どもが無意識に 首をかしげた姿勢 をとる
- その姿勢が続くことで
- 首の筋肉が強くつっぱる
- 首の骨(頚椎)の並びが一時的にずれる
- 結果として、首が傾いたまま戻しにくくなる
このうち一部のケースでは、
首の一番上の骨どうし(環椎と軸椎)の関節がねじれたままロックされる
「環軸椎回旋位固定(かんじくつい かいせんい こてい)」 に進行することがあります。

炎症性斜頸でよくみられる症状
こんな様子があれば、炎症性斜頸が疑われます。
- 首が一方向に傾いたままになっている
- 反対側を向こうとすると、強い痛みで大泣きする
- 首や肩の筋肉がカチカチに張っている
- 首を動かさず、体ごと向きを変えようとする
- その前に
- 熱が出ていた
- のどが痛かった
- 中耳炎があった
とくに 「風邪のあとに急に首が曲がった」 場合は要注意です。
寝違えとの違いは?
「寝違え」との違いを簡単にまとめると…
寝違えに近い場合
- 前日にスポーツや重い荷物など、首に負担がかかった
- 痛みはあるが、少しずつなら動かせる
- 首の傾きはそこまで強くないことが多い
炎症性斜頸が疑われる場合
- 風邪・のどの痛み・中耳炎のあとに、急に首が傾いた
- ちょっと動かしただけで 激しく痛がる
- 自分で首をまっすぐにしようとしても 戻せない
どちらにしても、
「子どもの首が急に曲がった」「痛みが強い」場合は自己判断せず、整形外科受診がおすすめ です。
首の痛みに隠れている「重大な病気」
首の痛みや斜頸の背景には、まれですが 重大な病気 が隠れていることがあります。
咽後膿瘍(いんごうのうよう)
- のどの奥(咽頭の後ろ側)に膿がたまる病気
- 高熱、強いのどの痛み、飲み込みにくさ、呼吸のしづらさ などを伴うことも
- 放置すると、呼吸に関わる危険な状態 になることがあります
腫瘍(しゅよう)
首周りの骨・軟骨・リンパ節などに腫瘍ができ、
その結果として首の痛みや斜頸が出る場合もあります。
その一つとして、
- Langerhans(ランゲルハンス)細胞組織球症
という病気が、
子どもの頭蓋骨や頚椎(首の骨)に発生することがあります。
頻度としては多くありませんが、
「首の痛み=寝違え」と決めつけるのは危険 なことがあります。
1週間以上続く首の痛み・斜頸は精査を
炎症性斜頸であっても、適切な治療を行えば
通常は少しずつ改善していく ことが多いです。
次のような場合には、
MRIなどによる精密検査(精査)が必要 になります。
- 首の痛みや斜頸が 1週間以上ほとんど良くならない
- むしろ痛みが強くなってきている
- 夜中に目が覚めるほどの痛みが続く
- 高熱が続いている、ぐったりしている
- 手足のしびれ・力の入りにくさがある
このようなときは、
- MRI検査(首の骨・神経・周囲の組織を詳しく見る)
などを行い、
炎症性斜頸なのか、他の病気が隠れていないか をしっかり確認します。
⚠ 放っておくとどうなる?
〜環軸椎回旋位固定と「不可逆的な斜頸」〜
炎症性斜頸は、きちんと治療すれば元に戻ることが多い病気 です。
ただし、放置してしまうと重大な問題につながることがあります。
① 環軸椎回旋位固定(かんじくつい かいせんい こてい)
首の一番上の骨どうし(環椎と軸椎)の関節が、
ねじれたままロックされてしまう状態です。
- 首が一方向に強く傾いたまま
- 反対を向けない
- 痛みでほとんど動かせない
といった症状が続き、
多くの場合、「入院」と「牽引(けんいん)治療」が必要 になります。
② 骨性癒合 →もとに戻らない斜頸に
環軸椎回旋位固定の状態が長く続くと、
ねじれた関節部分が 骨として固まってしまう(骨性癒合) ことがあります。
一度骨性癒合がおきると、
- 首のねじれ・傾きが 元に戻らない「不可逆的な斜頸」 になる
- 外見上の左右差や、慢性的な首・肩こり、頭痛の原因になる
- 場合によっては手術が必要になることも
といったリスクが出てきます。
整形外科ではどんな検査・治療をする?
検査
- 問診・診察
- いつから首が曲がったか
- その前に熱や中耳炎・咽頭炎がなかったか
- どの方向に動かしにくいか、どこを痛がるか
- 画像検査
- レントゲン(X線):首の骨の並び・ズレの有無
- 必要に応じて CT・MRI:環軸椎回旋位固定や腫瘍などの精査
治療
- 頚椎カラーで安静
→ 首をあまり動かさないようにして、筋肉と関節を落ち着かせる - お薬による治療
→ 消炎鎮痛薬、細菌感染が疑われる場合は抗生物質など - 牽引治療・入院
→ 環軸椎回旋位固定など、ズレが強い場合や症状が長引く場合
ご家庭で気をつけてほしいこと
- 首を 無理にまっすぐに伸ばそうとしない
- 楽な姿勢で休めるよう、枕やタオルの高さを調整する
- ジャンプや走るなどの激しい運動は控える
- 抱きかかえるときは、首をしっかり支える
- 処方されたカラー・お薬は、医師の指示どおりに続ける
すぐに受診してほしいサイン
保護者の方に、
「これがあればすぐ病院」と覚えておいてほしいポイントです。
- 首が急に曲がって、まっすぐに戻らない
- 少し動かすだけで、強い痛みで大泣きする
- 1週間以上、首の痛みや傾きがほとんど良くならない
- 高熱が続く、ぐったりしている、呼吸が苦しそう
- 手足のしびれや力の入りにくさが出てきた
ひとつでも当てはまる場合は、
迷わず整形外科(必要に応じて救急)を受診してください。
まとめ
- 炎症性斜頸は、風邪や中耳炎・扁桃炎などのあとに起こる「首が急に曲がる」病気です。
- 多くは適切な治療で良くなりますが、
咽後膿瘍や腫瘍が隠れている場合 もあります。 - 放置すると、
環軸椎回旋位固定 → 入院・牽引 → 骨性癒合による不可逆的な斜頸
へ進行するおそれがあります。 - 1週間以上続く首の痛み・斜頸、高熱やしびれを伴う場合は、MRIなどの精査が必要 です。
当院でできること
当院(中村整形外科皮フ科)では、
- 首の状態を確認する診察・レントゲン検査
- 必要に応じた MRI検査
- 頚椎カラーによる安静のサポート
- お子さまの状態に合わせたお薬の調整
- 入院・牽引治療や手術が必要な場合の、高次医療機関へのご紹介
などを通して、
「首が急に曲がった」「首が痛くて動かせない」お子さまの診断と治療をトータルでサポート しています。
「炎症性斜頸かもしれない」「寝違えかどうか心配」
そんなときは、どうぞ一度ご相談ください。

執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会

