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膝の裏が痛い

膝の裏が痛い

膝の裏が痛い…それ、神経の圧迫が原因かもしれません

「膝の裏がズキズキ痛む」「MRIで異常がないのに痛みが続く」
そんな症状の裏に、神経の圧迫(絞扼性神経障害:いわゆる神経の締め付け)が隠れていることがあります。

今回は、見落とされやすい原因である膝裏の神経(脛骨神経:けいこつ神経)の障害について、
解剖 → 病理 → 症状 → 治療 の流れでわかりやすく解説します。

解剖:膝裏を通る脛骨神経と膝窩筋枝

膝の後ろを走る太い神経「脛骨神経」は、坐骨神経から分かれ、ふくらはぎの筋肉を支配します。
その途中で分岐するのが膝窩筋枝です。

  • 支配筋:膝窩筋(popliteus)
  • 支配領域:膝関節後方、上脛腓関節の関節包
  • 走行:膝裏の内側深部を通り、膝窩筋の裏面へ分布

この枝は深層に位置しており、筋膜・血管・関節包の間を通過するため、
絞扼(神経の圧迫)を受けやすい構造になっています。

病理:神経が圧迫されるとどうなるか?

膝窩筋枝が周囲の組織で圧迫されると、神経の滑走が妨げられ、慢性的な痛みや違和感が生じます。

主な原因としては次のようなものがあります。

  • 膝関節炎や滑膜炎などの炎症性変化
  • 長時間の立位・屈伸運動・スポーツによる筋膜の癒着
  • 筋・腱・血管の走行異常による圧迫
  • 膝窩筋の過緊張や筋膜性疼痛との併発

これにより、膝裏の慢性的な鈍痛や放散痛として現れることがあります。

症状:どんなときに疑う?

主な症状

  • 膝裏(特に内側)の鈍痛・重だるさ
  • 立位や歩行で悪化し、軽く曲げると軽快
  • 階段下降・坂道下りで痛みが出る
  • 膝裏を押すと「ズーン」と響くような圧痛
  • ふくらはぎ上部まで放散する痛み

他の疾患との違い

疾患名特徴
ベーカー嚢腫触れる腫れやしこりあり
半月板損傷曲げ伸ばし時のひっかかり感
後十字靭帯損傷外傷歴や不安定感
神経の締め付け・引きつれ構造異常なしでも痛み持続、圧痛点明瞭、動かすと痛い

MRIやレントゲンで異常がない場合でも、神経性疼痛を見逃さないことが大切です。

治療:ハイドロリリース+リハビリで根本改善を目指す

① エコーガイド下ハイドロリリース

超音波(エコー)で神経の走行と周囲組織の癒着を確認し、
生理食塩水や局所麻酔薬を注入して神経周囲をリリースします。

これにより神経の滑走性を改善し、炎症を鎮めます。
治療直後に「膝の裏の重さが軽くなった」と感じる方も少なくありません。

② リハビリテーション

再発防止のために、膝周囲の筋バランスを整えます。

  • 膝窩筋・ハムストリングスのストレッチ
  • 大腿四頭筋・殿筋の筋力強化
  • 過伸展や歩行時の荷重バランス修正

神経リリースと運動療法を併用することで、
神経・筋膜・関節の動きを統合的に改善します。

当院での対応

当院では以下の治療を組み合わせて行っています。

  • 最新のエコー装置による神経評価
  • 脛骨神経膝窩筋枝へのハイドロリリース
  • 膝裏痛に特化したリハビリプログラム

「MRIで異常なし」と言われた膝裏の痛みも、
神経の絞扼が原因であれば改善できる可能性があります。

お気軽にご相談ください。

中村 公一

執筆者中村 公一

院長 / 整形外科専門医

親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。

経歴
津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
保有資格
医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
所属学会
日本整形外科学会 / 日本関節病学会