上殿皮神経障害とは?お尻の痛みやしびれ

「お尻の外側がズキズキ痛む」「長く座っているとしびれる」——こんな症状でお悩みではありませんか?
坐骨神経痛と思っていたら、実は「上殿皮神経障害」だったというケースも少なくありません。ここでは、その特徴や診断、治療法について解説します。
上殿皮神経とは
上殿皮神経(じょうでんひしんけい)は腰の背骨(腰椎)から出てお尻の皮膚に分布する細い神経です。
腰や仙骨の後方から臀部に向かって走行し、感覚を伝えています。坐骨神経のように太くはありませんが、障害されると臀部の外側・上部に限局した痛みやしびれが出ます。

上殿皮神経は腸骨稜付近(ASISから約7–8cm後方)で骨膜トンネル通過部が絞扼ポイントになりやすい
上殿皮神経障害の原因
- 長時間の座位・車の運転による脊椎の後弯(猫背姿勢)
- 腰椎圧迫骨折後の脊椎の後弯(猫背の姿勢)
- 筋緊張・姿勢不良
こうした要因で神経が絞扼される(締め付けられる)と、慢性的な臀部痛が出現することがあります。
症状の特徴
- お尻の外側〜上部に限局した痛み・しびれ
- 片側に多いが両側に出ることもある
- 立ち上がりや歩行よりも、長時間座っている時に悪化しやすい
- 坐骨神経痛と異なり、太ももや下腿まで痛みが広がらないことが多い
診断のポイント
- 圧痛:骨盤後方(上後腸骨棘周囲)を押すと痛い
- 画像検査:レントゲンやMRIでは異常が見つからないことも多い
坐骨神経痛や仙腸関節障害と区別することが大切です。
治療法
- 生活習慣の見直し:長時間同じ姿勢を避ける、ベルト・コルセットを緩める
- 理学療法:ストレッチ・姿勢改善、臀部や腰部の筋緊張緩和
- 神経ブロック注射:症状が強い場合には、上殿皮神経のハイドロリリース注射が有効なことがあります
症状が慢性化する前に、整形外科で正確な診断を受けることが重要です。
まとめ
お尻の外側が痛い・しびれるからといって、必ずしも坐骨神経痛とは限りません。
上殿皮神経障害は比較的知られていませんが、適切な診断・治療で改善が期待できる疾患です。
長引く臀部痛でお困りの方は、ぜひ一度整形外科でご相談ください。

執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会