変形性ひざ関節症の痛みについて考える

膝の痛みと変形性膝関節症
「レントゲンで膝の軟骨がすり減っているから痛い」
そう説明を受けたことはありませんか?
でも実際には、
- 軟骨がすり減っていても痛くない人
- 軟骨のすり減りが軽いのに強い痛みがある人
がいます。
つまり、膝の痛みは軟骨だけでは説明できないのです。
痛みに波があるのはなぜ?
もし「軟骨のすり減り」だけが原因なら、
痛みはいつも同じ強さで続くはずです。
でも現実は違います。
- 晴れの日は楽なのに、雨の日は痛い
- 歩きはじめだけ痛いが、だんだん楽になる
- 階段はつらいが、平地は大丈夫
こんな経験はありませんか?軟骨の厚みは変わっていないのに痛みは変動します。
これは痛みの原因が軟骨以外にもあることを示しています。
膝の痛みの原因
1. 骨の損傷
- 骨挫傷(骨にヒビのようなダメージ)
- 骨髄浮腫(骨の中の炎症や腫れ)
- これらの所見はMRIでないと診断が難しい
👉 骨には神経があるので、強い痛みの原因になります。
👉 この場合は「骨に負担をかけない」ことが大切です。

2. 滑膜や滑液包の炎症
- 軟骨の摩耗粉が滑膜を刺激して炎症
- 膝のクッションである滑液包の炎症
👉 消炎鎮痛薬、物理療法、注射で炎症を抑えると痛みは軽くなります。
👉 変形そのものを治すわけではありませんが、痛みは改善できます。
3. 筋肉や腱の硬さ
筋肉や腱が硬くなると膝に余分な負担がかかります。
👉 ストレッチやリハビリで柔軟性を高めることが重要です。
4. 神経の滑走障害
神経は動きに合わせて伸びたりずれたりしています。
癒着すると引っ張られて痛みやしびれが出ます。
👉 リハビリ(神経モビライゼーション)
👉 超音波ガイド下ハイドロリリース注射
で改善が期待できます。
レントゲンでわかること・わからないこと
レントゲンは膝の形や関節の隙間を確認でき、長年の負担を推測する大切な検査です。
ただし、
- 今の骨の損傷(骨挫傷など)
- 炎症の強さ
までは正確にわかりません。
👉 必要に応じてMRIなどを追加して診断します。

当院の考え方
膝の痛みは大きく分けると2つです。
- 骨の痛み
骨挫傷・骨髄浮腫 → 負担を避けて骨を守る治療 - それ以外の痛み
筋肉や腱の硬さ、神経の滑走障害、滑膜や滑液包の炎症
→ リハビリ、薬、物理療法、注射で対応
👉 痛みの原因に合わせた治療が大切です。
まとめ
- 変形性膝関節症の痛み=軟骨のすり減りだけではない
- 骨の損傷、炎症、筋肉・神経の要因など複数が関わる
- レントゲンは有用だが、今の痛みをすべて説明できるわけではない
- 当院ではリハビリ・神経モビライゼーション・ハイドロリリース・消炎治療を組み合わせ、一人ひとりに合った治療を行っています
「膝の痛みは仕方ない」とあきらめずに、ぜひご相談ください。

執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会