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動かすとズキッと痛む ― 神経の滑走障害とは?

動かすとズキッと痛む ― 神経の滑走障害とは?

「肩や腕を動かすとズキッと痛い」「太ももの外側がピリピリする」
そんな症状は、筋肉や関節ではなく 神経のトラブル が原因かもしれません。今回は、神経の「滑走(かっそう)障害」と呼ばれる状態について解説します。

神経は「動く組織」です

手や足にある神経は、筋肉や靱帯、骨の間を通りながら枝分かれしていきます。
体を動かすとき、神経も筋肉や腱と同じように 伸びたり・ずれたり(滑走) して動いています。

滑走障害とは?

ケガ・炎症・長時間の同じ姿勢などが原因で、神経と周囲の組織が くっついたり、動きにくくなる ことがあります。
これを「滑走障害」と呼びます。

要するに、神経の“滑り”が悪くなることで引っ張られ、しびれや痛みの原因になるのです。

代表的な症状

  • ピリピリするしびれ
  • 針で刺されたような鋭い痛み
  • 引っ張られるような違和感
  • 動かすと強くなる痛み(特徴的

部位別・神経別の具体例

  • 肘まわり(橈骨神経)
    → 前腕〜手の甲のしびれ、物をつかむときの痛み
  • 手首・手のひら(正中神経)
    → 親指〜中指のしびれ、細かい作業がしにくい(手根管症候群)
  • 肘の内側〜小指側(尺骨神経)
    → 薬指・小指のしびれ、手を握る力が弱くなる(肘部管症候群)
  • 肩まわり(腋窩神経)
    → 肩の外側の痛み、腕を上げにくい
  • 肩甲骨の外側(肩甲上神経)
    → 肩の後ろ〜肩甲骨外側のズキズキ、肩の使いすぎで悪化
  • 肩甲骨の内側(頸椎C5・C6神経根)
    → 首を動かすと肩甲骨内側がズキッ、長時間のデスクワークで悪化
  • 太ももの前(大腿神経)
    → 階段や立ち上がりで太もも前が突っ張る
  • 太ももの外側(外側大腿皮神経)
    → ズボンが擦れるだけで痛い、立ち仕事や肥満で悪化(大腿外側皮神経痛)
  • ふくらはぎ外側〜足の甲(腓骨神経)
    → 外側のしびれ、足首が上がりにくい(下垂足)

治療・リハビリでできること

1. リハビリ(神経モビライゼーション)

神経をゆっくり動かす運動で、滑走を改善し血流を良くします。

2. 注射による治療(ハイドロリリース)

超音波で神経を確認しながら、その周囲に薬を流し込み、癒着をはがして動きを改善します。

良くなるとどうなる?

  • しびれや痛みが軽くなる
  • 動かしたときの突っ張り感がなくなる
  • 日常生活が楽になる

当院の取り組み

当院では、

  • リハビリによる神経モビライゼーション(神経の動きを改善する運動療法)
  • 超音波ガイド下で行うハイドロリリース

に力を入れています。

これらを組み合わせることで、

  • 長引くしびれや痛みの改善
  • 日常生活動作の向上
  • 再発予防

が期待できます。

「なかなか治らない痛みやしびれ」でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。

中村 公一

執筆者中村 公一

院長 / 整形外科専門医

親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。

経歴
津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
保有資格
医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
所属学会
日本整形外科学会 / 日本関節病学会