階段の上り下り 痛い方の足から?それとも痛くない方の足から?

膝や股関節に痛みがあるとき、日常生活の中で特に負担を感じるのが階段の上り下りです。
患者さんからもよく質問を受けるのが、
「階段は痛い足から出すべきですか?それとも痛くない足からですか?」
という疑問です。この記事では、整形外科医の立場から、階段昇降の基本的な考え方と注意点を解説します。
なぜ階段は膝や股関節に負担がかかるのか?
平らな道を歩くときに比べ、階段では膝関節にかかる負荷が大きくなります。
- 昇りでは、自分の体を持ち上げるために太ももの筋肉(大腿四頭筋)や膝関節に強い力がかかります。
- 降りでは、体重が落ちるのをブレーキで支える必要があり、衝撃が膝や股関節に集中します。
特に変形性膝関節症や半月板損傷がある方では、階段昇降で痛みが強くなることがあります。
基本ルール:「上りは良い足から、下りは悪い足から」
階段の上り下りには整形外科でよく使われる覚え方があります。
- 昇り → 痛くない足(良い足)から
- 降り → 痛い足(悪い足)から
階段を昇るとき(上り)
- 先に「良い方の足」を一段上に出します。
- その後で痛みのある足を同じ段にそろえます。
- 体を持ち上げる動作は主に良い足で行うため、悪い足への負担を減らせます。
階段を降りるとき(下り)
- 先に「痛みのある足」を下に出します。
- その後で良い方の足を同じ段にそろえます。
- 体を支える役割を良い足に任せられるため、悪い足の衝撃を減らせます。
このルールを覚えるための合言葉は、
👉 「上りは良い足から、下りは悪い足から」
です。
杖を使うときの注意
杖を併用する場合は、杖は痛くない側の手で持つのが基本です。
- 昇りは「良い足 → 杖と患側の足」の順。
- 降りは「杖 → 患側の足 → 良い足」の順。
手すりを使える場合は、積極的に利用して体重を分散させましょう。
膝への負担を減らす工夫
階段を安全に使うために、次の点も意識しましょう。
- 手すりをしっかり持つ
- 一段ずつ両足をそろえて進む(急がない)
- 体重管理をする(体重は膝への負担に直結します)
- 太もも・お尻の筋力を鍛える(大腿四頭筋や殿筋の強化で安定)
- 無理なときは階段を避ける(エレベーターやエスカレーターの利用)
まとめ
- 階段は膝や股関節に大きな負担がかかります。
- 昇りは「痛くない足から」、降りは「痛い足から」が基本ルールです。
- 杖や手すりを使って体重を分散し、安全にゆっくりと昇降しましょう。
👉 階段の上り下りに不安がある方は、無理をせず整形外科にご相談ください。

執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会