子どもが股関節(足の付け根)を痛がる...「単純性股関節炎」を知っていますか?

「朝起きたら子どもが足を引きずってる」「昨日まで元気に走り回っていたのに急に足を痛がる」
そんなとき、疑われる病気のひとつが 単純性股関節炎(たんじゅんせいこかんせつえん) です。
この記事では、整形外科専門医の立場から、単純性股関節炎の原因・症状・治療・注意点をわかりやすく解説します。
単純性股関節炎とは?
単純性股関節炎は、3〜10歳の子どもに多く見られる一過性の炎症で、特に男の子に多いといわれています。ウイルス感染(風邪など)のあとに起こることがあり、明確な外傷がなくても突然股関節に痛みが出るのが特徴です。
原因:
- はっきりとした外傷がない
- 感冒(風邪)のあとに発症することが多い
- 免疫反応による炎症が関与していると考えられています
主な症状
- 股関節(太ももの付け根)の痛み
- 片足を引きずる(跛行)
- 膝の痛みを訴えることもある(実際は股関節の問題)
- 動かすと痛がる
- 発熱はないか、あっても微熱程度
診断方法
- 問診と診察:外傷歴の有無、歩行の様子、関節の可動域をチェック
- レントゲン:骨の異常がないことを確認
- エコー検査:関節に水(関節液)がたまっていないか確認
- 必要に応じて血液検査(感染性股関節炎との鑑別)
治療と経過
単純性股関節炎は、安静にしていれば数日〜1週間ほどで自然に回復します。
治療のポイント:
- 安静(走らせない・ジャンプさせない)
- 痛みが強い場合は鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)を使用
- 症状がなくなっても1〜2日は様子を見てから運動を再開
注意が必要なケース
単純性股関節炎に似た病気に感染性股関節炎(細菌感染)があります。こちらは緊急治療が必要です。
次のような場合はすぐに医療機関を受診してください:
- 高熱(38℃以上)
- 関節がまったく動かせない
- 夜も痛みで眠れない
- 症状が2〜3日たっても改善しない
まとめ
単純性股関節炎は、子どもによくみられる一時的な股関節の炎症です。
軽い症状でも、放置せずに早めに整形外科を受診することで、重大な病気との見極めができ、安心して経過を見守ることができます。
「子どもが足を引きずっている」「股関節を痛がる」ときは、お気軽にご相談ください。
当院での対応
当院ではエコーを用いた股関節の評価、必要に応じた血液検査や画像診断を行い、お子さまの症状に合わせた丁寧な診療を行っています。
股関節の痛みや歩き方の変化が気になる場合は、お早めにご受診ください。

執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会