子どもが急に肘を痛がって動かさない…それ、肘内障かもしれません【整形外科医が解説】

急に子どもが腕を動かさなくなったら要注意。肘内障の原因・症状・応急対応・整復方法・再発予防まで、整形外科専門医がわかりやすく解説します。
肘内障とは
5歳以下の乳幼児に多い「橈骨頭輪状靭帯(とうこつりんじょうじんたい)の亜脱臼(はずれかかった状態)」です。骨折ではなく関節がズレただけですが、放置すると痛みや不安が続くため早期整復が大切です。

どんな年齢層に多い?
- ピークは1〜3歳
- 女児より男児にやや多いとの報告
- 骨や靭帯が未発達なため、ごくわずかな外力で起こります
主な原因と起こりやすいシーン
シーン | 具体例 |
---|---|
手を急に引っぱる | 道路横断中に腕を引く、遊具から引き起こす |
持ち上げる | 手首をつかんで“ぶら下げる遊び” |
転倒時の腕支持 | 手をつかずに急停止して腕がひねられる |
ポイント:親御さんが「そんなに強く引っぱっていないのに…」と感じても発生します。
症状の特徴
- 発症直後から痛みで腕をぶら下げたまま動かさない
- 典型的には泣き止んでも腕は使わない
- 腫れや内出血はほぼなし(骨折と異なる点)
診断と整復はこう進む
- 問診と視診だけでおおよそ診断可能
- 骨折が疑わしい場合のみレントゲン線撮影
- 関節を基に戻すテクニック(整復といいます。回外・屈曲法)
- 基本的に固定や投薬は不要
肘内障を疑って1,2回整復を試みても、整復された感覚がなく、痛がる場合は骨折などの可能性があるため、無理には行わずレントゲンを撮影します。
受診のタイミングと応急対応の注意点
- すぐに整形外科を受診しましょう
- 自力で整復を試みると骨折を見逃すリスクがあるためNG
再発を防ぐコツ
- 手首ではなく腋の下から抱き上げる
- 片腕を引っぱって持ち上げない
- 子どもと歩くときは手をつなぎすぎず、体側を支える
再発率は約20〜30%とも言われ、比較的再発が多いのが特徴です。
よくある質問
Q1. 整復後に痛みが残る場合は?
→骨折や靭帯損傷など他のケガなどが隠れている場合があります。
Q2. 何回も繰り返しますか?
→ 発育とともに靭帯が強くなる4〜5歳頃には自然と起こらなくなります。
Q3. 保育園・幼稚園にはいつから行ける?
→ 整復が成功し痛みがなければ当日から通常生活OKです。
まとめ
肘内障は乳幼児に多い関節のケガですが、早期整復で完治します。痛がって腕を動かさないときは無理に触らず、整形外科を受診しましょう。再発予防には「腕を引っぱらない」生活動作が鍵です。

執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会