肘の後ろが急に腫れてきた方へ

「最近、肘がポコッと腫れてきたけど、痛みもあるし、これって何?」
そんなお悩みを抱えていませんか?
その症状、肘頭滑液包炎(ちゅうとうかつえきほうえん)かもしれません。
肘が腫れて痛む…それは肘頭滑液包炎かもしれません。原因・症状・セルフケア・治療法・再発予防を整形外科医がわかりやすく解説。
肘頭滑液包炎とは?
滑液包(かつえきほう)とは、骨・腱・皮膚などがこすれ合わないように保護する袋状のクッション構造のことです。
肘頭滑液包炎とは、肘の出っ張り部分(肘頭)にある滑液包が炎症を起こし、腫れや痛みが出る状態を指します。
肘頭滑液包炎の主な特徴
- 肘の後ろ側にポコッとした腫れ
- 押すと痛みを感じる
- 肘の動きに合わせて違和感や痛み

肘が腫れる主な原因は?
肘頭滑液包炎の原因には、以下のようなものがあります。
✔ 長時間の肘つき動作
デスクワークや畳での作業、寝ながらスマホなど、肘をつく癖が慢性的な圧迫につながります。
✔ スポーツや重作業の反復
バレーボール、ボウリング、ウェイトリフティングなど肘をよく使うスポーツや作業で発症しやすいです。
✔ 外傷(打撲)
転倒やぶつけた際の肘の打撲が引き金となって血がたまったり、炎症が起きることも。
✔ 感染(化膿性滑液包炎)
小さな傷口から細菌が侵入し、膿がたまるケース。
発熱・激痛・赤みがある場合はすぐに受診を。
肘頭滑液包炎によくある症状
- 肘の後ろが「プクッと膨らむ」
- 押すと痛い
- 肘を曲げ伸ばしするとズキッと痛む
- 発赤・熱感・発熱(感染時)
特に「急に腫れた」「熱がある」などの症状がある場合は、感染の可能性もあるため、早めの整形外科受診をおすすめします。感染の場合、放置すると悪化する一方です。
自宅でできるセルフケア(初期対応)
軽度の場合は、次のような方法で炎症を抑えられることがあります。
安静にする
肘をついたり、荷物を持ったりする動作を避けて、関節を休ませましょう。
アイシング(冷却)
発症後2~3日は冷やすことで炎症を抑える効果があります。
1回10〜15分、1日数回を目安に。
保護パッド・肘サポーター
圧迫や摩擦を防ぐための肘パッドを使い、日常生活でも肘を守りましょう。
診断と治療
診断
- 視診・触診:腫れ・圧痛・可動域チェック
- 超音波検査(エコー):滑液のたまり具合を確認
- 穿刺検査:滑液を抜いて炎症の程度や感染有無を調べる
治療法(保存療法が基本)
治療法 | 内容 |
---|---|
消炎鎮痛薬 | 飲み薬・湿布など |
滑液包穿刺 | 腫れの軽減・検査目的 |
ステロイド注射 | 慢性例や再発例に効果的 |
アイシング・安静 | 軽症例ではこれだけでも改善することも |
手術になることも…
化膿性や長期改善しない難治性の場合、滑液包の切除手術が検討されます(通常は日帰り〜短期入院)。
再発予防のポイント
再発を防ぐには、日常生活の中で肘に負担をかけない工夫が重要です。
肘つき動作を避ける
肘の下にクッションやパッドを敷くなど、直接的な圧迫を避けましょう。
適度な休憩とストレッチ
作業やスポーツの合間に肘をこまめに動かし、血流を促進しましょう。
まとめ|肘の腫れや痛みが気になったら、早めに整形外科へ
「肘が腫れてきた」「押すと痛い」といった症状は、肘頭滑液包炎のサインかもしれません。
放っておくと慢性化したり、感染を起こすこともあるため、違和感を感じたら早めの受診が安心です。
特に皮膚が赤くなっている場合は細菌が感染している可能性があるので早めに医療機関へ受診してください。
当院では、超音波検査や注射療法を用いた正確な診断と適切な治療を行っています。
気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会