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膝をひねってから、何かがおかしい

膝をひねってから、何かがおかしい

「膝をひねったあと、痛みと腫れが出た」そんな経験はありませんか?
ジャンプの着地や急な方向転換、スポーツ中の接触などで膝にひねりが加わると、膝の靱帯が損傷することがあります。
特に「前十字靱帯(ACL)」という重要な靱帯の損傷は、若い方やスポーツをする方に多く、放置すると膝の不安定感や将来的な関節の変形(変形性膝関節症)につながる可能性もあるため注意が必要です。

前十字靱帯損傷とは?

前十字靱帯(ACL)は、膝の骨(大腿骨と脛骨)をつなぐ4本の主要な靱帯のひとつで、脛骨(すねの骨)が前にズレるのを防ぐ役割があります。
この靱帯が切れることで膝関節が不安定になり、「膝折れ」や「力が入らない」といった症状が出てきます。

こんな動作で起こりやすい

前十字靱帯損傷は、次のような動きの際に起こることが多いです。

  • ジャンプの着地で膝が内側に入ってしまった
  • 急に止まった・方向転換をしたとき
  • 接触プレー(タックル)で膝をひねった
  • スキー・サッカー・バスケットなどでの受傷

主な症状

  • 膝の中で「ブチッ」という音がした
  • 膝がすぐに大きく腫れてきた(関節内出血)
  • 膝に力が入らず、ガクッと崩れる感じがする
  • 歩くのが不安定、階段が怖い
  • スポーツを続けられない

これらが当てはまる場合、ACL損傷の可能性があります。

診断と検査

整形外科では、以下のような方法で診断を進めます。

  • 徒手検査(Lachmanテストなど)
  • X線検査:あきらかな骨折の有無を確認
  • MRI検査:ACLの断裂や合併損傷(半月板・骨挫傷)を評価

MRIは特に重要で、靱帯断裂の有無、骨折を正確に把握できます。

治療法:保存か?手術か?

第一選択は手術です。なぜなら前十字靭帯は自然に治らないからです。そのまま放置すると膝の軟骨が傷んでしまい変形性膝関節症に移行してしまいます。

手術療法(再建術)

  • 腱を使って靭帯を再構築(再建)します
  • 手術後はリハビリを半年以上かけて進める
  • 年齢が若い方、特にスポーツ復帰を目指す場合は手術をお勧めします

保存療法

高齢であったり、すでに変形が進んだ膝の方は手術はせず保存療法で経過を見ます。

  • 装具やサポーターを使用
  • 太もも・体幹の筋力トレーニングで膝を安定させる
  • 日常生活には支障がないが、スポーツには制限あり

リハビリの重要性

ACL損傷ではリハビリが非常に重要です。靱帯だけでなく、筋力・バランス・動作パターンを整えることで、再発を予防し、競技復帰や日常生活の安定を目指します。

当院ではリハビリスタッフが手術してもらった病院のリハビリプログラムを基に、患者様に合わせたリハビリテーションを行っております。

リハビリと復帰までの流れ

ACL損傷後のリハビリは段階的に進めていきます。

時期リハビリ内容
術後〜2週間膝の可動域確保、筋萎縮予防
~3か月筋力強化、歩行訓練
~6か月ランニング、ジャンプ練習開始
6〜9か月スポーツ動作復帰、競技復帰の判断

フルスポーツ復帰までは通常6〜9か月を要します。

まとめ:膝をひねったら、まずは整形外科でMRI評価を

膝をひねって痛みや腫れが出た場合、「ただの捻挫」と思わずに早めにMRI撮影を受けてください。レントゲンではACL損傷は見逃されてしまいます。時間が経つと診断が難しくなったり、治療が遅れて関節が不安定になって後遺症につながる可能性もあります。心当たりのある方は、早めに整形外科を受診し、MRI検査を受けることをお勧めします。

中村 公一

執筆者中村 公一

院長 / 整形外科専門医

親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。

経歴
津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
保有資格
医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
所属学会
日本整形外科学会 / 日本関節病学会