知らないと危険!人工芝によるやけどにご注意ください

夏の日差しが日に日に強くなり、公園やグラウンドなどで過ごす時間が増えてきましたね。
先日、サッカーに打ち込む少年が「足の裏が痛い」と来院されました。診察してみると、両足の親指(母趾)に水ぶくれがありました。最初はサッカーの摩擦によるものかと思っていましたが、詳しく話を聞くうちに、人工芝でプレーする子どもたちに同様の症状が多くみられることが分かってきました。
実は、サッカー関係者の間では、「人工芝でプレーするとやけどをする」ことは広く知られた事実だそうです。お恥ずかしながら、私はそれまで「靴を履いている状態で人工芝で熱傷を起こす」ことを知りませんでした。
少年の水疱に対する処置を行った後、自分でも調べてみたところ、人工芝による暑熱環境についての文献も多くあり、驚かされました。
🌿人工芝のメリットとリスク
近年、サッカー環境は整備が進み、人工芝のフィールドが全国に増えています。
そうした流れの中で、人工芝には以下のようなメリットがあります
✔︎ 雨でも使用できる
✔︎ ボールコントロールがしやすい
✔︎芝の管理がしやすい
一方で、夏場の人工芝の表面温度は60〜70℃にも達することがあり、足裏に低温やけどや擦過傷を引き起こすリスクがあることが分かってきました。さらに、人工芝の上では外気温以上に気温が上昇しやすく、脱水や熱中症のリスクも高まることが報告されています。
🌿子どもたちを守るために

今後ますます猛暑が予想される中、熱を遮断する機能を持つスパイクなども開発されており、子ども向けの商品も販売されています。こうした対策グッズをうまく活用しながら、足裏を守ることが大切です。
今回の経験を通じて、私自身も学ぶことが多くありました。
サッカーを頑張る子どもたちが安心してスポーツを楽しめるように、人工芝の熱によるリスクについても、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思います。
参考文献
濱口勇悟(2013)「ロングパイル人工芝グラウンドにおける暑熱環境とサッカープレーヤーの脱水との関連」『身体教育医学研究』14, 17–25.

執筆者中村 文香
副院長 / 皮膚科専門医
皮膚科医として、皆様のお悩みに寄り添い、地域に根ざした診療を心掛けています。お困りの際はぜひご相談ください。
- 経歴
- 伊勢高等学校 卒業/関西医科大学医学部 卒業/三重大学皮膚科学講座入局/三重大学附属病院/関西医科大学付属病院/南伊勢町立病院/松阪市民病院/松阪中央病院/鈴鹿回生病院/ラベールミラクリニック(名古屋市内)/大手美容皮膚科(大阪市内) など
- 保有資格
- 日本専門医機構認定皮膚科専門医/産業医/難病指定医/日本化粧品検定1級/化粧品成分検定1級
- 所属学会
- 日本皮膚科学会