【手のひらの痛みはこれかも?】スポーツ選手に多い有鈎骨骨折

スポーツや転倒のあとに手のひらの小指側に違和感や痛みを感じることはありませんか?
単なる打撲と思って放置していると、「有鈎骨鉤骨折(ゆうこうこつこうこっせつ)」という特殊な骨折が隠れている場合があります。
今回は、意外と見逃されやすいこの有鈎骨鉤骨折について解説します。
有鈎骨(ゆうこうこつ)とは?
有鈎骨は、手首の小指側(手根部)にある小さな骨で、手根骨のひとつです。
この骨には「鉤(こう)」と呼ばれるフック状の突起がついており、靱帯や腱、神経(尺骨神経など)の通り道を形成しています。

有鈎骨鉤骨折とは?
その名の通り、有鈎骨の鉤(フック部分)に起こる骨折です。
この部分は、スポーツや転倒時に繰り返し衝撃を受けやすく、特に以下のような人に起こりやすいとされています。
● 好発するスポーツ
- 野球(バットを振る動作)
- ゴルフ(スイング時の衝撃)
- テニス
- ソフトボール
バットやラケットが手のひら小指側に当たることで繰り返しの衝撃が鉤部分に集中し、骨折に至ることがあります。
症状
- 小指側の手のひらの痛み
- 握力低下
- 握ると痛い
- しびれ感(尺骨神経の刺激による)
特に、ゴルフやバットスイング後に痛みが強くなった場合は要注意です。
診断
単純X線検査では見逃されることが多い骨折です。
特に鉤部分は通常の正面・側面撮影では見えづらいため、以下の検査が有効です。
- 鉤突起撮影(有鉤骨専用撮影)
- CT検査(骨折部のズレを判断できます)
- MRI(骨折部が完全骨折か不完全骨折か判断します)
治療
1. 保存療法(不完全骨折などで骨癒合が期待できる場合)
- 安静(シーネやギプス固定)
- スポーツ活動の休止
- 鎮痛薬、リハビリ
2. 手術療法(骨癒合が得られにくい、症状が強い、スポーツ復帰が必要な場合)
- 鉤部の切除(骨折片を除去)
- スクリュー固定術(若年・競技レベルによって選択)
特にプロスポーツ選手では、早期の復帰を目指して手術を選択する例が多いです。
■ 放置するとどうなる?
- 骨癒合不全による慢性痛
- 尺骨神経障害(小指・環指のしびれ)
- 握力低下、スポーツパフォーマンスの低下
早期発見・早期治療が予後に直結します。

■ プロ野球選手の実例:清宮幸太郎選手
2019年のオープン戦で、清宮幸太郎選手は右手のグリップエンドに強い衝撃を受け、右手の有鈎骨鉤(フック部分)を骨折しました。精密検査にて有鈎骨鉤骨折と診断され、その直後に骨片摘出手術を受けています。
この骨折は、バットスイング時に繰り返し強い負荷が手のひら小指側にかかることが原因とされ、特にパワーヒッターやバット操作の多い選手に起こりやすいといわれています。
清宮選手は早期復帰を目指して骨片摘出術を選択し、術後は比較的早い段階でリハビリに入り、試合復帰を果たしました。
このように、競技復帰の時期を重視するアスリートでは、手術による治療が選択されるケースが多いのが特徴です。
まとめ
有鈎骨鉤骨折は、見逃されやすいが日常生活やスポーツに大きな影響を与える骨折です。
特に「小指側の手のひらが痛む」「バットやラケットを振ると痛い」といった症状がある方は、精密検査をおすすめします。
中村整形外科皮フ科では、レントゲン検査やMRI検査を通じて適切な診断・治療をご提供しております。手術が必要な場合は総合病院へご紹介させて頂きます。
お困りの症状があれば、お気軽にご相談ください。

執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会