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【バーナー症候群とは?】スポーツ中に腕がしびれる・だるい|原因・症状・治療法を解説!

【バーナー症候群とは?】スポーツ中に腕がしびれる・だるい|原因・症状・治療法を解説!

ラグビーやアメフト選手に多い「バーナー症候群」は、神経を一時的に損傷するスポーツ障害です。原因・症状の特徴、自然回復との違い、反復例で注意すべき頸椎の異常、復帰までの流れを専門医が解説します。

■ バーナー症候群とは?

「バーナー症候群(Burner syndrome)」は、主にラグビーやアメリカンフットボール、レスリングなどの相手と衝突することが多いコンタクトスポーツ中に、首や肩を強くぶつけた後に発症する経症候群です。
片側の腕に、焼けつくような激しい痛みやしびれ、脱力感が突然出現するのが特徴です。

この症状は、頭部から首にかけての灼熱感(焼かれるようなヒリヒリした痛み)として感じられることが多く、その感覚が「Burn(燃える・焼ける)」に例えられるため、「バーナー(Burner)症候群」と呼ばれています。

■ こんな症状はありませんか?

  • スポーツ中に首や肩をぶつけた直後、腕がビリビリとしびれる
  • 数秒〜数分間、腕の力が抜けて使いづらくなる
  • 首を動かすとしびれが強まる
  • 片側の腕だけに症状がある

これらの症状が一時的に出てすぐに回復するようなら、バーナー症候群の可能性があります。

■ 原因は何?

主に以下の2つの原因が考えられます。

  1. 腕神経叢の牽引(伸ばされる)
    • 首が横に強く曲げられ、反対側の腕の神経が引き伸ばされる
  2. 神経の圧迫
    • 鎖骨や首周辺をぶつけることで神経が一時的に圧迫される

これにより、一時的な神経障害が起こり、しびれや脱力といった症状が現れます。

■ バーナー症候群と他の病気の違い

似た症状を引き起こす疾患に、「頚椎ヘルニア」「脊髄損傷」「末梢神経損傷」などがあります。バーナー症候群は一時的な神経の障害であり、MRIや神経伝導検査で大きな異常が見られないのが特徴です。

症状が数分以内で改善するかどうかが、他疾患との大きな違いです。

■ 治療法は?

  • 多くの場合、安静のみで自然回復します。
  • 繰り返す場合や症状が持続する場合は、整形外科でMRIや神経学的検査を行い、他の病気との鑑別を行います。
  • 頸椎の可動域制限や筋力低下があれば、リハビリや物理療法(温熱・低周波など)を行います。

■ 繰り返すとどうなる?

バーナー症候群を繰り返すと、神経のダメージが蓄積し、感覚異常や筋力低下が長引くリスクがあります。

■ 予防のためには?

  • 首周囲の筋力トレーニング(特に僧帽筋・肩甲挙筋)
  • ヘッドギアやショルダーパッドの着用
  • プレイ時の姿勢・タックル動作の見直し

などが重要です。

■ スポーツ復帰の基準は?

バーナー症候群は一時的な神経障害であることが多く、短期間の安静で回復する場合がほとんどですが、スポーツ復帰には医学的な判断基準があります。

◆ 一般的な復帰基準:

  • 痛み・しびれなどの神経症状が完全に消失していること
  • 頚椎の可動域が左右差なく正常であること
  • 頚部・肩甲帯・上肢の筋力が完全に回復していること
  • スパーリングテスト(頚椎の圧迫誘発テスト)で症状誘発がないこと
  • 必要に応じて神経伝導検査で異常がないこと

◆ 繰り返す症例では?

  • 繰り返すバーナー症候群は「反復性のバーナー症候群」と呼ばれ、スポーツ引退を検討すべき重症例もあります。
  • 複数回(3回以上)発症した場合や、症状の持続が15分以上の場合は、精密検査と専門医の判断が必要です。

反復性のバーナー症候群では、 頸椎の椎間孔狭窄を合併しているケースが少なくありません。
このような場合、神経根への圧迫が持続的に加わるため、症状が一過性にとどまらず、しびれや脱力が長引く(遷延する)傾向があります。

したがって、繰り返しバーナー症状を呈する場合は、単なる一時的な神経牽引障害ではなく、構造的な異常(椎間孔狭窄や骨棘、椎間板変性など)を念頭に置いた精査(MRIなど)が重要となります。

まとめ

バーナー症候群は、特にスポーツ中に突然起こる神経の一時的障害です。多くの場合は自然回復しますが、症状が長引く・繰り返す・脱力が残る場合は早めに整形外科を受診しましょう。

【参考文献】

Torg JS, Ramsey-Emrhein JA. “Cervical cord neurapraxia: return to play.” 

Clin Sports Med. 1997 Jan;16(1):109–120.

Cantu RC, et al. Recurrent burner syndrome in athletes. Clin Sports Med. 2003;22(3):615–626.

中村 公一

執筆者中村 公一

院長 / 整形外科専門医

親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。

経歴
津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
保有資格
医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
所属学会
日本整形外科学会 / 日本関節病学会