【成長期のアスリートに注意!】骨盤裂離骨折とは?症状・原因・治療法を解説

中学生・高校生のスポーツ選手に多い「骨盤裂離骨折(こつばんれつりこっせつ)」をご存知ですか?
サッカー・陸上・野球など、ダッシュやキック・ジャンプを繰り返す競技で起こりやすいケガで、放置すると痛みが長引いたり、再発リスクが高まるため注意が必要です。この記事では、成長期に多いこの特殊な骨折について詳しく解説します。
骨盤裂離骨折とは?
骨盤には、太ももの筋肉(大腿四頭筋、ハムストリングスなど)が付着する“成長軟骨(裂離しやすい部分)”があります。
成長期にはこの部分がまだ柔らかく、激しい運動や急な動きにより、筋肉の力で骨の一部が引き剥がされるように骨折してしまうことがあります。これが「骨盤裂離骨折」です。
成長期に起こりやすい理由とは?
成長期の子どもは「骨の成長が筋肉よりも先に進む」という特徴があります。
この成長のアンバランスによって、筋肉や腱が相対的に引き延ばされやすくなり、強い牽引力が骨の付着部(裂離しやすい軟骨部分)に加わることで、裂離骨折が生じやすくなります。
さらに、成長期の骨は「骨端線」や「成長軟骨」が存在し、まだ完全な硬さに達していないため、衝撃に弱いという点も裂離骨折の発生に関係しています。

主な好発部位と原因
裂離部位 | 付着する筋肉 | 好発動作例 |
---|---|---|
上前腸骨棘(ASIS) | 縫工筋 | ダッシュ・スタートダッシュ |
下前腸骨棘(AIIS) | 大腿直筋 | キック動作・ジャンプ |
坐骨結節 | ハムストリングス | スプリント・ジャンプ・蹴り |
恥骨稜 | 腹斜筋 | 体幹の急なひねり |

症状の特徴
- 運動中に「ブチッ」「パキッ」とした音や感覚
- 激しい痛みとともに運動中断
- 腫れや内出血がみられることも
- 歩行困難や片足に体重がかけられないこともある
診断と検査
診察では、受傷時の状況や運動動作、圧痛部位、可動域制限などを確認します。
確定診断にはレントゲン検査が基本ですが、骨片が小さい場合や見逃しが疑われる際にはMRIや超音波が有用です。
治療とリハビリ
基本は保存療法
- 安静・松葉杖歩行(1〜2週)
- スポーツ復帰まで6〜8週が一般的
- 骨片が大きく転位している場合は手術も検討
リハビリの進め方(例)
- 急性期(〜2週):炎症管理、安静指導、可動域維持
- 回復期(3〜6週):体幹・股関節周囲筋の軽負荷トレーニング
- 復帰期(6〜8週):ダッシュ、キックなどのスポーツ動作再開
再発予防のために
- 柔軟性の向上(特にハムストリングス・腸腰筋)
- 体幹・骨盤周囲の安定性トレーニング
- 成長期はオーバートレーニングを避ける
- 痛みを我慢せず早めに整形外科を受診すること
まとめ
骨盤裂離骨折は、成長期のアスリート特有の骨折です。
しっかりと診断・治療すれば後遺症なく回復しますが、「筋肉痛だと思って放置」すると長引くケースも少なくありません。
スポーツを全力で続けたい中高生のためにも、正しい知識と適切な対応が大切です。
気になる症状があれば、お早めに当院へご相談ください。
中村整形外科皮フ科
🏥 三重県津市半田206‑1
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執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会