【膝の裏がズキッ!】内側半月板後根断裂とは? 見逃すと人工関節のリスクも!

内側半月板後根断裂とは?
膝関節には、内側半月板と外側半月板という2枚の半月板が存在し、それぞれが膝の安定性と衝撃吸収を担っています。
内側半月板後根断裂(MMPRT:Medial Meniscus Posterior Root Tear)は、その内側半月板の後方にある付着部(後根)が断裂する特殊な損傷です。
この後根が切れると、半月板はその位置を保てなくなり、荷重分散機能が失われて膝関節への負担が急増します。結果として、関節軟骨の損傷や骨壊死、変形性膝関節症の進行を招くおそれがあります。


どんな人に起こりやすい?
MMPRTは特に以下のような状況で発症することがあります:
- 発症のきっかけ: 階段の踏み外し、小さな段差でのジャンプなど軽微な外力
- 症状: 膝の裏側に突然の痛み、「グキッ」とした感覚
- 好発年齢: 50〜60歳代の女性
- 原因: 加齢に伴う半月板の変性やスポーツ外傷
半月板の役割とMMPRTによる症状
膝関節にある半月板は、関節のクッションとしての役割と、膝の安定化を担う重要な構造です。これが断裂すると、以下のような症状が現れます:
- 膝の引っかかり感や痛み
- 水がたまる(関節水腫)
- 膝が伸ばせなくなる「ロッキング現象」

痛みを感じたら、まずMRI検査を
MMPRTはレントゲンでは写らないため、初期診断で「異常なし」とされてしまうこともあります。その結果、漫然とヒアルロン酸注射や湿布による保存療法が行われ、知らない間に膝の状態が悪化することがあります。
早期診断のためにはMRI検査が不可欠です。
治療法:保存よりも手術が第一選択
MMPRTは放置すると膝の変形が急速に進行します。そのため、保存療法ではなく、手術療法が推奨されます。
- 基本方針: できるだけ早期に手術を検討
- 手術方法: 関節鏡視下による半月板縫合術(低侵襲)
- 術後管理: 数週間の免荷(松葉杖)とリハビリテーションが必要
※Furumatsuらは、後根縫合によって関節内圧と膝メカニクスの改善が得られることを報告しています(Furumatsu et al., 2015; 2012)。
当院での取り組み
当院では、患者様の病歴を聴取しMMPRTを疑ったらすぐにMRIをお勧めし専門的な治療方針の提案を行っております。「年齢のせい」や「ただの膝痛」と思い込まず、違和感があれば早めの受診をおすすめします。
引用文献
Furumatsu T, Kodama Y, Kamatsuki Y, et al.
Meniscal extrusion progresses shortly after the medial meniscus posterior root tear.
Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2012;20(3):546–551.
https://doi.org/10.1007/s00167-011-1592-3
Furumatsu T, Kodama Y, Kamatsuki Y, Okazaki Y, Ozaki T.
Medial meniscus posterior root tear causes an altered tibiofemoral contact mechanics via extrusion.
Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2015;23(1):117–124.
https://doi.org/10.1007/s00167-014-2800-1

執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会