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【スポーツ中の脱臼は要警戒】若い世代に多い「反復性肩関節脱臼」とは?

【スポーツ中の脱臼は要警戒】若い世代に多い「反復性肩関節脱臼」とは?

スポーツ中に肩が外れた10〜20代の方は、再発リスクが高い「反復性肩関節脱臼」の可能性があります。原因や治療法、当院の手術対応方針について詳しく解説します。

―10代・20代での初回肩関節脱臼と「反復性脱臼」の関係について―

「部活動中に転んだ拍子に肩が外れた」「ラグビーや柔道のプレー中に脱臼してしまった」――そんな経験をされた10代~20代の方は要注意です。
実はこの年代で初めて肩関節を脱臼した方は、その後何度も肩が外れてしまう“反復性肩関節脱臼”へ進行するリスクが非常に高いことが分かっています。

この記事では、若年層に反復性脱臼が多い理由と、当院での対応方針について、医学的根拠とともにご紹介します。

そもそも「肩関節脱臼」とは?

肩関節は人体の中で最も自由に動く関節のひとつですが、その分構造的に外れやすいという特徴も持っています。
強い衝撃や転倒などで、肩の骨(上腕骨頭)が関節の受け皿(関節窩)から外れてしまう状態が「肩関節脱臼」です。

「反復性肩関節脱臼」とは?

一度脱臼すると、関節を安定させていた関節唇(かんせつしん)や靱帯が損傷してしまうことが多く、その結果、わずかな衝撃や動きでも再び脱臼してしまう状態を「反復性脱臼」と呼びます。

若年層ほど再脱臼しやすいのはなぜ?

年齢別の再脱臼率に関する研究

Hoveliusらの有名な前向きコホート研究(1983年)では、年齢と再脱臼のリスクに以下のような相関があることが報告されています。

年齢層再脱臼率
12〜22歳70〜90%
23〜29歳50〜60%
30歳以上20〜30%未満

Hovelius L. Anterior dislocation of the shoulder in young patients. A ten-year prospective study. J Bone Joint Surg Am. 1983;65(3):343-349.

特に10代では再脱臼が“ほぼ必発”とさえ言われるほど高頻度であることが、複数の研究から示されています。

解剖学的な特徴も関係しています

  • 関節包や靱帯が柔らかく、弾力性が高い
  • 骨端線(成長軟骨)が閉鎖しておらず、骨性支持が不十分
  • 部活動やクラブ活動などで高頻度に肩を使う・衝突する機会が多い

また、MRIなどの画像検査で、初回脱臼時から関節唇損傷(Bankart lesion)や骨欠損(Hill-Sachs lesion)を伴うことが少なくないため、保存療法だけでは安定性の回復が難しいとされます。

当院での対応方針 ~スポーツを続けたい10代の方へ~

スポーツを継続されたい10代の方で反復性脱臼が疑われる場合、関節鏡視下手術による関節唇修復術(バンカート修復術)を積極的にご提案しています。

以下のような条件に当てはまる方は、早期に手術を検討することをおすすめしています。

コンタクトスポーツ(ラグビー・柔道・バレー等)を継続予定の方
MRIで関節唇損傷が確認された方
すでに脱臼を複数回繰り返している方

関節鏡による手術は低侵襲で体への負担が少なく、リハビリ次第で早期復帰が可能です。
再脱臼の不安を抱えながらスポーツを続けるよりも、しっかり治して安心して競技に打ち込める環境を整えることが重要だと私は考えています。肩の脱臼を繰り返している、スポーツに復帰したいが不安がある――そんな方はぜひ一度、当院までご相談ください。

中村整形外科皮フ科

🏥 三重県津市半田206‑1
📞 TEL:059‑269‑5515
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中村 公一

執筆者中村 公一

院長 / 整形外科専門医

親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。

経歴
津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
保有資格
医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
所属学会
日本整形外科学会 / 日本関節病学会