交通事故後、なぜ時間がたってから首が痛くなるの?

交通事故に遭った直後は痛みをあまり感じなかったのに、数時間〜数日経ってから首が痛くなってきた…という経験はありませんか?
これは決して珍しいことではなく、むち打ち症(頸椎捻挫)に多くみられる典型的な症状の現れ方です。
本記事では、交通事故後に時間差で痛みが出てくる理由について、医学的な根拠に基づいて解説します。
なぜ“あとから”痛くなるの?
衝撃直後はアドレナリンで痛みを感じにくい
事故直後は体が危機的状況に対応するため、アドレナリンやノルアドレナリンなどのストレスホルモンが分泌されます。
これにより、一時的に痛みの感覚が鈍くなることが知られています(Goldstein DS. Cell Mol Neurobiol. 2010)。
そのため、事故の直後は「大丈夫」と思っていても、ホルモンの作用が切れる数時間〜半日後に痛みを強く感じることがあります。
筋肉・靭帯の微細な損傷が時間差で炎症を起こす
追突などの事故では、首の筋肉や靭帯に目に見えないレベルの損傷(微細損傷)が生じます。
これらの組織では、損傷後に炎症性物質(サイトカイン)が時間をかけて分泌され、痛み・腫れ・可動域制限が出現します。
このメカニズムは、Sterling M. らによる研究(J Physiother. 2014)でも詳しく解説されており、「事故から数日後に症状が強くなる」ことが科学的に裏付けられています。
むち打ち症(WAD)では遅発性症状が一般的
カナダの「ケベック・タスクフォース」報告(Spitzer WO, Spine 1995)では、
むち打ち症(Whiplash-Associated Disorders, WAD)の症状は、受傷12〜72時間後に出現・増悪するのが一般的とされています。
実際に、交通事故後すぐには症状が軽くても、
- 首が動かしにくい
- 肩こりのような重さ
- 頭痛や腕のしびれ
といった症状が数日かけて現れてくることが多いのです。
心理的・神経的な要素も関与する
むち打ちに関連する痛みは、心理的ストレスや不安、痛みに対する意識の強さ(疼痛感受性)にも影響されます。
Linton SJ(Spine. 2000)によれば、不安や緊張が強いと、痛みをより敏感に感じる傾向があるとされており、事故後に落ち着いたタイミングで症状が悪化したように感じることもあります。
違和感があれば早めの受診を
事故後すぐに痛みがなかったとしても、
数時間〜数日たってから痛みや違和感が出るのは、むしろ自然なことです。
症状が軽いからと放っておかず、早めに整形外科で診察・画像検査を受けることが大切です。
的確な診断がつくことで、保険対応や今後の治療もスムーズになります。
▶ 中村整形外科皮フ科では
当院では、交通事故による首や腰の痛みに対して、むち打ち症の診断・リハビリ・保険対応まで一貫して対応しています。
軽い痛みや違和感でも、お気軽にご相談ください。
【ご予約・お問い合わせ】
中村整形外科皮フ科
〒514-0823 三重県津市半田206-1
TEL:059-269-5517(交通事故対応直通ダイヤル)
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執筆者中村 公一
院長 / 整形外科専門医
親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。
- 経歴
- 津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
- 保有資格
- 医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
- 所属学会
- 日本整形外科学会 / 日本関節病学会