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足首の捻挫(ねんざ)の診断と治療

~正確な評価と段階的リハビリで再発予防を~

足首の捻挫(ねんざ)はスポーツや日常生活で最も多い外傷の一つです。
この記事では、足首をひねった際の「正確な診断方法」と「重症度別の固定・リハビリの流れ」について、整形外科専門医が詳しく解説します。


1.足首の捻挫とは?

足首の捻挫(足関節捻挫)は、足首をひねった際に靱帯(じんたい)が損傷するケガです。特に損傷されやすいのは、外くるぶしの前にある前距腓靱帯(ぜんきょひじんたい)です。

重症の場合は、以下の靱帯も損傷されることがあります。

  • 踵腓靭帯(しょうひじんたい):外くるぶしの下部
  • 前下脛腓靱帯(ぜんかけいひじんたい):すねと外くるぶしをつなぐ深部靱帯

2.正確な診断にはMRI検査が有効です

足首の腫れや痛みが強い場合、単なる捻挫ではなく「靱帯断裂」や「骨挫傷」「軟骨損傷」を伴っている可能性もあります。

MRI検査が有効な理由

  • 靱帯損傷の程度を正確に把握できる
  • 骨や関節内の異常も検出可能
  • 骨挫傷(こつざしょう)があると痛みや腫れが強く、免荷(松葉杖歩行)が必要です

※軟骨損傷を放置すると、将来的な変形性関節症の原因になります。


3.靱帯の修復状況はエコーで定期確認

回復過程では、超音波検査(エコー)で靱帯の状態を定期的に確認します。

  • 靱帯の腫れや断裂の有無をリアルタイムに確認
  • 再断裂の早期発見が可能

4.重症度に応じた固定・荷重・リハビリの進め方

重症度主な損傷部位固定方法荷重リハビリ開始時期
軽症前距腓靱帯の軽度損傷ギプスシーネ → サポーター部分荷重不要 or 早期可
中等症前距腓靱帯の部分断裂ギプスシーネ → 半硬性装具部分〜全荷重装具装着後より
重症前下脛腓靱帯の損傷ありギプス固定3週(免荷)→装具完全免荷 → 徐々に荷重装具移行後より

5.足関節捻挫のリハビリの流れ(目安)

時期内容
初期(〜3週)安静・冷却、装具移行後にリハビリ開始(足指運動・ROM)
中期(4〜6週)筋力強化、バランス訓練、つま先立ち練習
後期(7週〜)ジャンプやダッシュ、スポーツ復帰訓練

6.再発を防ぐために重要なポイント

● 痛みがなくても油断しない

  • 痛みが消えても、靱帯は完全に治癒していないことがあります。
  • 中途半端な運動復帰は「足関節のゆるみ」の原因になります。

● 「足首のゆるみ」がもたらす問題

  • 捻挫の再発が増える
  • 日常生活でも足首の不安定感
  • 長期的に「変形性足関節症」へ進行するリスク

● 適切な固定・適切なリハビリを

  • 靱帯が治癒するためには固定が不可欠
  • 状態に応じた段階的リハビリが重要です
  • 医師・リハビリスタッフの指導のもと、安全に進めましょう

まとめ|足関節捻挫は「しっかり治す」が将来の足首を守る鍵

  • 「軽い捻挫だと思って放置」は禁物です。
  • MRIとエコーによる評価を受け、靱帯損傷の程度に応じた固定とリハビリを行うことが、再発防止と将来的な足関節の健康を守るために重要です。
  • 足首に違和感や不安定感が残る場合は、整形外科を早めに受診しましょう。
中村 公一

執筆者中村 公一

院長 / 整形外科専門医

親切・思いやりの心を大切にし、整形外科の専門知識を活かして地域の皆様の健康を支えたいと考えております。お気軽にご相談ください。

経歴
津高等学校 卒業 / 富山大学薬学部 卒業 / 富山大学医学部 卒業 / 三重大学大学院医学系研究科 修了 / 三重大学附属病院 /名張市立病院 / 松阪市民病院 / 函館共愛会病院 / おおすが整形外科 / 元八事整形外科・形成外科 / ひのとり整形在宅クリニック など
保有資格
医学博士 / 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 / 日本整形外科学会認定 リウマチ医 / 日本整形外科学会認定 スポーツ医 / 日本整形外科学会認定 リハビリテーション医 / 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 / 日本関節病学会 Coolief 疼痛管理用高周波システム講習プログラム 修了 / 日本医師会認定 産業医 / 身体障害者福祉法指定医 / 難病指定医
所属学会
日本整形外科学会 / 日本関節病学会